墨田住人の備忘録

色々な情報に接して得心することは多いけれども、40を過ぎてからすぐに忘れてしまうので備忘録として書こうと思う。

燕子花図

 

 もとより芸術には疎いので、都内の美術館なども行ったことがないところが多い。根津美術館もその1つであったが、尾形光琳の有名な燕子花図が公開されているということで見に行った。恥ずかしながら、根津美術館というのは名前は聞いたことがあったけれどもてっきり文京区の根津にあるものだと思っていた。実際の場所は表参道で、祖父母の墓所からそれほど遠くはないことを知って少し驚いた。

 

 今年は尾形光琳の300年忌ということで、さずがの私でも知っているほど有名な国宝の屏風図2点が併せて展示されている。特に燕子花図は、恐らく高校時代の教科書にも出ていただろうし、今までも何度となくその見事な構成や美しい色遣いなどが書かれたものを目にしてきたので、期待を高まらせながら美術館に行った。

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 確かに感心した。けれども、やはり私には絵心が決定的に欠けているのだろう。その場であっと胸を打たれるほどの衝撃はなかった。その構成の巧みさ、デザイン性の高さなどの知識をインプットされるとなるほどとは思うのだけれども、本来はもっと何か感性にガツンと訴えかけるものを持っているからこそ多くの人が賞賛してやまないのだろう。

 しかし、負け惜しみではないけれども1つ勝手なことを言えば、この絵が完成した当時には当然ながら金箔の美しさは今のものとは比較にならなかったはずで、燕子花の花や葉の色も違っていたはずである。その時の完成度が10であるとするならば、現在のこの絵はどのくらいのものなのだろう。歴史的価値は置いておいて、絵が本来持っている価値というのは残念ながら落ちているのではないかと思う。仮に江戸時代に見ることができていたなら、もっと激しく心を揺さぶられていたのだろうか。まあ当時は庶民の目に触れる事はなかったのだから、気軽に見ることができる現代の方が幸せなのだろうけど。

 

 根津美術館の敷地内は庭園になっていて、思いの外広々としていて驚いた。燕子花が見事に咲いているというのが何とも粋だと感じた。

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